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電動機器の開発を行うには、モータとコントローラに関する知識が必要です。この記事では、極数の多いブ ラシレスDCモータの一種であるステッピングモータに着目しています。この技術は通常、フィードバック センサなしで開ループで駆動します。つまり通常はローターの位置が不明な状態で電流をその時の相に適用 します。回転子が固定子の磁束に合わせて移動すると、次の相に電流を供給します。
コイルに電流を供給するには、バイポーラ方式とユニポーラ方式の2種類の方法が考えられます。この記事で は、バイポーラモータとユニポーラモータの違いと駆動方法について説明します。両方の技術の利点と制限 を示します。
4ステップの永久磁石ステッピングモータの例を見てみましょう(図1 を参照)。回転子は対をなす極を持つ磁石1個で出来ていて、固定子 はA相とB相の2相で構成されています。
- ユニポーラの場合:電流は常に同じ方向に流れます。各コ イルの電流方向は一方向に固定されていて、コイルA +また はコイルA-のいずれか一方に電力を供給します。コイルA + とコイルA-に同時に電力を供給することはありません。
- バイポーラの場合:すべてのコイルで電流はどちらの方向 にも流れる可能性があります。A+相とA-相には同時に電力 を供給します。
バイポーラモータには相ごとに少なくとも1つのコイルが必要であ り、ユニポーラモータには相ごとに少なくとも2つのコイルが必要で す。両方のケースについてさらに詳しく見ていきましょう。
モータの構造
ユニポーラ
ユニポーラ構成では、各モータ相は2系統のコイル 巻線で構成します。A相とB相で構成する2相モータ の場合、モータには4系統のコイル巻線を設置します (図2を参照)。
- A相はA +、A-で構成
- B相はB +、B-で構成
各コイルについて、電流は一方向のみに流れます。そ れゆえユニポーラと呼びます。
電圧ドライブの場合、コイルごとに1個のトランジスタ (スイッチ)があるだけで、制御システムは非常に簡 単です。トランジスタを閉じると、コイルに電力が供 給されます。電流を流すコイルを切り替えるために、 トランジスタを交互に開閉します。
トランジスタQ1とQ2は同時に閉じられません。A相に 電力を供給するには、作動させたい電流の方向に応 じて、トランジスタQ1またはQ2のいずれかを閉じます (図3を参照)。
ユニポーラ制御では、電力を供給するのは一度に相 の半分だけです。つまり、電流はコイルの量の半分 だけを使用します。通常、電圧ドライブでは直列抵 抗を使用して、電気的時定数を減らします(以下の 詳細を参照)。
バイポーラ
バイポーラモータでは、相ごとに必要なコイル巻線 はひとつだけです。電流はどのコイルにも両方向に 流れるため、バイポーラと呼んでいます。制御には、 8個のトランジスタを使用した2基のHブリッジが必 要です(図4を参照)。
電流の方向を切り替えるには、以下に示すようにト ランジスタを交互に開閉します(図5を参照)。
バイポーラドライブの利点は、相ごとにコイル全体 を使用することです。
このようなバイポーラドライブは、電圧ドライブま たは電流ドライブのいずれかで使用します。電流ド ライブの場合、通常は各相の電流をパルス幅変調 (PWM)で制御します。
利点と制限
電圧ドライブ電圧ドライブの場合、ユニポーラモータの制御は非常に簡単で、4個のトランジスタによる単純な電子回路が 必要なだけです。非常に費用対効果の優れたソリューションです。技術者は、電子部品が今日よりも高価だっ た何十年も前に、このタイプのソリューションに興味を持ったものです。
バイポーラモータも電圧ドライブで駆動できますが、2Hブリッジが必要です。
電流ドライブ
電流ドライブでは、バイポーラモードの選択を推奨します。電流ドライブでユニポーラ技術を実現するにはよ り複雑な電子ソリューションが必要で、バイポーラドライバよりもモータ性能が低下します。
電圧ドライブでの注意点
インダクタンスの影響により、コイル内で電流が上昇するまでに時間がかかります。ユニポーラまたはバイ ポーラのいずれかで、直列抵抗を追加して電気時定数(L/R)を下げることができます。
外部抵抗を追加することにより、電流は減少します(i= U/(R+r))。つまり、同じ供給電力に対して抵抗を追加し た場合には、
- 低速では、トルクが低くなります。トルクは電流に比例しますが、外部抵抗でのジュール損失により電力 が消費され電流値が下がり、モータのトルクは減少します。
- 高速では、トルクが高くなります。外部抵抗でのジュール損失によりいくらか電力が消費されますが、電気 的時定数が低くなるため、コイル内の電流がより速く上昇し、モータはより多くのトルクを供給できます。
注:供給電圧を上げると、より低い電流でもこの効果を発揮させることができますが、全体的なエネルギー 効率は低下します。トルクは高速で向上し、低速でも同じ値に保ちます。
保持トルク
保持トルクとは、モータがストール時に保持できる最大トルクです。保持トルクは、トルク定数と相の電流に比 例します。
より高いトルクを発生させるには、コイルの巻数 を増やすか、電流量を増やします。
電流量を増やすと、ジュール損失の消費により更 に熱が発生します (Pjoule = R × i 2 )。電流供給量 は、コイルの加熱能力による制限を受けます。一 般的にコイルの温度は、コイルの最大許容温度 (通常は100°C~130°C、モータのタイプに依存) に達する可能性があります。
ここで1つの相がオンであることを想定して、両方の組み合わせでのジュール損失を見てみましょう(図6を 参照)。
個々のコイルはそれぞれ独自の抵抗、インダクタンス、トルク定数を持つことを考慮すると、ジュール損失が 両方の場合で同じである場合、Pjoule uni = Pjoule uni = P0
よって次式が得られます。
同じジュール損失が消費される場合、バイポーラモータはユニポーラドライブよりも√2倍(約40%)多くのト ルクを生成できます。
同じ電力の場合、バイポーラドライブはユニポーラドライブよりも優れた結果が得られます。
ダイナミックモード
上で示したように、同じ消費電力に対して、バイポーラモードは40%多くのトルクを供給できます。ただし電圧 ドライブで高速作動させる場合、コイル内の電流の遷移が速いユニポーラモータはバイポーラモータよりも 高いトルクを供給できます。以下の例を見てみましょう(図7を参照)。
導線/モータ接続
バイポーラモータには通常4本の導線 がありますが、ユニポーラモータには6 本、または中間点が接続されていない 場合は8本の導線があります(図8を参 照)。
8本導線の場合
ユニポーラモータに8本の導線がある場合、半相を接続すればバイポーラバージョンに変換できます。
8本導線のモータをバイポーラとして使用する場 合、コイルは直列または並列に接続できます。どち らのオプションも、同じモータ変動率(R/k^2)と、 同じ電力に対して同じトルク性能を備えています (図9を参照)。
直列構成での抵抗値は、並列構成の4倍です。
直列接続には、並列接続の2倍の電流と半分の電 圧が必要になります。
直列接続でも並列接続でも、供給電力は一緒です。
結論
ユニポーラ構成とバイポーラ構成の両方に利点があります(図10を参照)。
ユニポーラ制御は、過去においては一般的に使用されていました。電子部品のコスト改善により、現在は電流 ドライブでのバイポーラの使用が一般的です。電圧ドライブの場合、ユニポーラが依然として費用対効果の 高いオプションです。