はじめに

ブラシ付きコアレスDCモータは、電力を機械的な動力に変換します。摩擦が少なく、起動電圧が低く、高効 率で、熱散逸に優れ、線形のトルク-速度特性が必要な高性能アプリケーションに最適です。小型のブラシ 付きコアレスDCモータは、貴金属または炭素銅整流システムとレアアースまたはアルニコ磁石を組み合わせ たコアレスロータ (自立コイル) で構成されています。

ブラシ付きコアレスDCモータは、インスリン ポンプや点滴ポンプ、生物製剤供給機器な ど、パッケージが小型で高出力密度が要求 される高機能な機器によく使用されていま す。製造にはモータの信頼度が特に重要な ので、この白書ではブラシ付きコアレスDC モータの耐用年数を予測するワイブル解析 法の各段階を説明します。ワイブル解析で は、ある用途をシミュレートした条件下で の数個のモータサンプルのテスト結果に基 づき、複雑な数学モデルを使ってモータの 平均耐用年数を見積もります。(図1)

ブラシ付きコアレスDCモータのトルク-速度曲線

DCモータの特性はモータの速度トルク曲線で表さ れます。図2は貴金属整流のブラシ付きコアレスDC モータのグラフで、X軸がトルク、Y軸が速度を表して います。

最大連続トルクの線は、通常の条件下でモータを 連続作動させた時の温度限度を示しています。最大 連続トルクの線の左側の領域は連続的作動領域を、 右側の領域は断続的作動領域を示しています。断続 的領域では、モータの作動期間は熱時定数と生成し たトルクのレベルによって制限されます。モータがト ルクの定格の最大値に近づくにつれて、作動時間が より短くなります。連続トルクの制限を超えて作動さ せた場合も、全体的なデューティサイクルの影響を 受けます。

様々な荷重ポイントでの信頼度を決定する重要な モータの設計要因を図2に示します。高速での荷重 ポイント (1と4) での信頼度は整流とベアリング設計 の関数で、一方最大連続トルクの荷重ポイント (3と 6) での信頼度はその熱設計の関数となります。最大 連続トルクの線の右側の任意のポイントでの信頼度 は、熱設計と機械設計の両者の関数です。ポイント 1、2、3で表す曲線は最大連続出力の95%を表し、ポ イント4、5、6は最大連続出力の70%を表します。最 大連続出力の70%での作動は最大連続出力の95% での作動よりも信頼度が高まります。

信頼度を見積もる方法

小型コアレスDCモータの高速化への要求が増すに つれて、整流システムやベアリング設計の重要性も 増えています。最大トルク要件の増加により、様々な モータの部分組立品の熱設計や機械設計の重要性 も増え、作動時の荷重ポイント (トルクと速度の組 み合わせ) が異なる場合には、モータの信頼度も変 わることが分かっています。

アプリケーション要件とテスト計画の特定

回転方向と時間の経過に応じたトルク-速度要件 や、このアプリケーションが作動する環境 (温度、 湿度、振動など)、モータの平均耐用年数といった、 用途に応じた荷重ポイントとモーションプロファイ ルを理解することが重要です。ほとんどの機器メー カーは開発した製品の耐用年数に関して特定の基 準を設けていて、それを基に保証を行います。モータ が目標とする耐用年数は製品の予想耐用年数の関 数です。

信頼度は通常は研究室で、用途に応じた実際の作 動条件を再現して、数個のサンプルをテストして見 積もります。こういった条件をテストするには、サン プルのモータを治具に取り付け、渦電流や電磁気 ヒステリシスブレーキで負荷をかけ、ファンクショ ンジェネレータに接続します。ファンクションジェネ レータが必要なトルク-速度-時間特性を生み出して いる状態で、モータ出力シャフトへの一定トルクに ブレーキをかけると、それに応じた負荷がモータに かかります。テストの設定は顧客の仕様に出来るだ け合わせるように設計します。

理想的には5個から30個程度のサンプルをテストす べきですが、テストに使用できるモータの数、必要 なデータの正確性、テスト施設の能力に依存します。 テストするモータの数が多いほど、予測できるモー タの耐用年数の信頼水準が上がります。

信頼度テストとワイブル解析

信頼度テストは規定した荷重ポイント、デューティ サイクル、環境条件にて各モータに対して行います。 テストはモータの障害発生ポイントを決定するよう に策定しています。障害の基準はテスト開始前に明 確に規定しておきます。障害は電流の引き込みの突 然の増加、過熱、大きな騒音と振動、機械的な障害 を観察して検出できます。そのため信頼度を算出す る技術者は、基準値データからのパラメータの変動 を継続的に測定する必要があります。

全サンプルの故障までの時間 (TTF) データを収集し たら (少なくとも3個のサンプルからのデータ収集を 推奨します)、ワイブル法を使って障害データポイン トを解析します。ワイブル分布のプロットは信頼度 の見積もりに幅広く使用されています。その解析が、 β値に応じてあらゆる種類の障害のタイプ (つまり減 少、一定または増加) に使用できるデータの包括的 な分布に基づいているからです。

ワイブル分布はワイブル確率プロット上の線 (付録 を参照)、またはY軸が障害率か不信頼度、X軸が故 障までの時間を表す両対数グラフで表されます。こ の分布または線の傾きをシェイプパラメータ (β) と 呼びます。この線とX軸との切片はスケールパラメー タや特性耐用年数 (η) の計算に使用します。特性耐 用年数とは障害が63.2%の確率で発生する耐用年数 です。(図3)

ワイブルプロットは、モータが耐用年数に達するの は、しばしばバスタブ曲線と呼ばれる有名な3種類 の明確な領域のどれかに当てはまることを示します。β <1 の場合、障害は初期不良で、この種の障害 ははんだ付け不良、軸方向の遊びが大きすぎる、不 適切なプレローディングといった製造上の問題が 原因です。β = 1 の場合、障害発生率は一定で、こ の障害を偶発故障と呼びます。当社が主に意図す る耐用年数とはこれです。β >1 の場合、障害は摩耗 故障または耐用年数故障で、障害は時間と共に増 加します。

ワイブル分布のパラメータの見積もり

ワイブル解析を行う従来のアプローチはプロッティ ング法で、使用可能なデータの初期評価から始め ます。個別の障害発生時間を観測した障害と停止 の数に基づいてランク付けし、その後ワイブル確率 グラフにプロットします。それからデータポイント を結ぶ、最もよく適合する線を引き、アナリストが データに合う分布を決定します。最もよく適合する 線はモータの特性耐用年数 (η) を表しており、障害 率が時間と共にどう変化するか (傾き = β) を決定 します。

ワイブルCDF (累積密度関数) F(t) の操作を線形 (y=mx+b) の形式に収めるために、ワイブル確率グラ フのY軸は自然対数を2回取った目盛、X軸は自然対 数を1回取った目盛としています。

より良く理解するために、具体的な例を挙げます。 5個の16 mmサイズのDCモータを70%の出力と最高速 度でテストするとし (速度-トルク曲線のポイント4)、テ ストするユニットはすべて障害が出るまでテストし、 その障害発生時間を記録するとします。記録した障 害発生時間は1,488、2,304、1,224、2,304、2,976時間で した。障害発生時間は中央値を計算するため小さい 値から順に並べる必要があります。この中央値を確 率グラフへのデータポイントのプロットに使います。

個別の障害をランク付けする目的はワイブルプロッ トのY座標の値を決定するためです。一方、X座標の 値は単に個別の障害が発生した時刻を表します。

確率のプロットの対応するY座標には障害の確率F(t) の計算が必要で、これがモータの不確実度として規 定されます。不確実度の見積もりはBernardの近似を 使って中央値 (MR) を修正して計算します。修正中央 値計算法の方程式は:

ここでNは障害の総数 (この場合N = 5)、jは障害の発 生順序の番号です。この場合、 j =1とは1,224時間に 起こった障害、j=2は1,488時間に起こった障害、など となります。

X座標とY座標は表1に示すように計算し、確率のプ ロッティングに使用します。

表1 - 中央値の計算

障害 障害発生時間 中央値
F(to) の見積もり
(j) (t) (j-0.3)/(N+0.4)
1 1,224 0.117
2 1,488 0.283
3 2,304 0.45
4 2,304 0.617
5 2,976 0.783

最もよく適合する線をデータのポイント間を結ぶよう に引き、ワイブル分布のパラメータ値を決定します。

ワイブルパラメータ

確率プロッティング法でβ (シェイプパラメータ) は 2.8、Eta (スケールパラメータ) は2,300時間と見積もっ ています。見積もったβ値が1より大きいため、ワイブ ル解析により障害のタイプは摩耗故障であることが 分かります。

ワイブルを使った耐用年数予測

B10ライフ/信頼度

ワイブルパラメータを見積もったら、B10ライフを計 算できます。B10ライフとはユニット全数のうち10%に 障害が発生する時間、または信頼性レベルが90%に なる時間を言います。

この例の場合、B10は1,080時間と計算されます。この 値は図4に示すように、確率プロットで確率線が10% の不信頼度と交わる点から垂直に線を引いて見積も ることができます。X軸の該当する値がB10ライフを 表しています。

要約

この体系立ったアプローチは、様々な用途に使用する ブラシ付きコアレスDCモータの信頼度特性を見積も る際に利用できます。この白書では、通常の使用条 件下でテストし障害データを解析することで、モータ の信頼度を見積もる方法をレビューしました。通常 の作動条件下でのテスト期間は完了までに数か月、 あるいは数年かかる可能性すらあるため、テスト中に モータにひとつまたは複数のストレスをかけ (トルク、 速度、温度、振動など)、スケジュールを短縮する加 速寿命試験 (ALT) 手法で信頼度を見積もりました。

参考文献

1. An Introduction to Reliability and Maintainability Engineering: Charles E Ebeling (July 2017)
2. Probability Plotting: Reliability Hotwire Issue 8 (October 2001)
3. Reliability-estimation-of-permanent-magnet-dc-motor: Assembly (IAM 2015)

付録

ワイブル累積分布関数の線形化

ワイブル分布は耐用年数の予測に幅広く使用されますが、それは最も包括的な分布だからで、その特殊なケー スとしてデータの関数や分布パラメータを制限したものが他の種類の分布、つまり正規分布、指数分布、二項 分布などです。2パラメータのワイブル分布の累積分布関数 (CDF) または不信頼度関数は次式で与えられます:

ここでη をスケールパラメータ、βをシェイプパラメータと呼びます。
次の段階ではこの関数を直線の形式 y = mx + bに変換します:
そのためには上記の方程式の1を左辺に移しその自然対数を取る必要があります

もう一度その自然対数を取ります

Where

この方程式はすべての変数が1次なのでy = mx + bに似ています。これは傾きがβ、 切片が–βln(η)の線形方 程式です。 βln(η)。

これでワイブル確率プロットのX軸とY軸ができました。X軸は単なる自然対数です。X = 1n(t)だからです。Y軸 はやや複雑で、次式で表します:

ここでF(t)は不確実度です。

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図1 - ブラシ付きコアレスDCモータ
図2 - トルク対速度曲線
図3 - サンプルの確率プロット
図4 - 確率プロット