ブラシ付きDCモータを発電 機として駆動

ブラシ付きDCモータとブラシレスDC (BLDC)モー タがどちらも発電機として動作すると聞く と、設計エンジニアは驚くかもしれません。 ブラシ付きDCモータはDC電圧出力を必要とする発電 機用途に適し、ブラシレスDCモータはAC電圧の用途 に適しています。BLDCモータをDC電圧出力に使用す る場合は、電圧整流回路が必要になります。ブラシ 付きDCモータをAC出力に使用する場合は、DC/AC変 換回路が必要です。

この記事では、ブラシ付きDCモータを発電機として 使用した場合の回転数、電圧、トルク、電流の基本的 な関係を説明します。

はじめに

モータのロータが磁場の中で回転すると、起電力に よってロータの巻線に「逆起電力」と呼ばれる電圧 が生じます。逆起電力定数KE (単位: mV/rpm)の値は、 モータの仕様書に記載されています。逆起電力(Ui)の 値は、モータシャフト回転の角速度(ω)に正比例し、次 の式で表されます。

モータを発電機として動作させる場合、機械的に連 結されたシャフトが外部からの力で回転すると、ロー タのコイル部分がエアギャップで正弦曲線状に変化 する磁束を通過して回転します。ロータ巻線の巻き 数に応じて正弦波電圧が発生し、回転速度と磁束の 関係によって電圧の大きさが決まります。たとえば、 ロータのコイルが1巻きの場合、発生する起電力は正 弦曲線であり、1つの電気周波数に等しい周期となり ます。

ブラシ付きDCモータの巻線は意図的に奇数回(3、5、 7回など)巻かれ、1組のブラシによってコイルに電力 を供給します。発電モードでシャフトが回転すると、 発生した逆起電力電圧が出力端子で測定されます。 モータ設計の特性(コイルの巻き数を含む)に基づい て、電圧リップルが一般的に発生し、通常は出力電 圧の5%未満を占めます。

出力電圧はシャフト回転数の関数であるため、モー タを発電機として使用することを選択した場合、逆 起電力定数(KE)は式1を満たすように選択する必要が あります。負荷を考慮に入れなければ、巻線の逆起 電力定数は  よりも大きくなるはずです。実現可能 なシャフト回転数が逆起電力に対して不十分な場合 は、モータの最大許容回転数のパラメータを超えな い限り、適切なギヤ減速装置を追加してモータシャ フトの回転数を上げることができます。

端子電圧、最大電流、負荷抵抗

図1は、負荷(RLoad)が両端子に接続されていない場 合、モータの端子(Ui)に生じる電圧がロータの角速 度に正比例することを示しています。この条件では、 モータに流れる電流がゼロになります。負荷をモー タの端子に接続すると、全体の負荷抵抗に応じて電 流が流れ、電圧は減少します。負荷が接続されて電 流(ILoad)が回路を流れている場合の端子電圧(UT)は、 次の式で表されます。

モータシャフトの角速度が固定されている場合は、 負荷電流が増加して端子電圧が減少します(式3)。 逆起電力が両端子の抵抗性電圧低下に等しい場合 は、端子電圧がゼロになります。

図2は、発電機に理想的なブラシ付きDCモータにお ける負荷電流と端子電圧のグラフを示しています。 モータの各端子が接続されていない場合はUTとUiが 等しくなり、電流がロータの巻線に流れなくなりま す。各端子が短絡している場合は最大量の電流が回 路に流れ、UTがゼロになります。

回路に流れる最大電流は、次の式で計算できます。

その他すべてのパラメータが一定の場合、モータ シャフトの角速度が増加すると図2のグラフは同じ 傾斜で右側に移動し、UiとIMaxがいずれも増加しま す。式5では、モータ巻線に固有の抵抗(RRotor)が、発 電機モードで最大電流を制限する要素となります。 RRotorの値が大きいと発電機システムの感度が高ま り、その結果生じる電圧変化と引き込み電流によっ てシステムが不安定になります。モータの逆起電力 定数が大きく抵抗が低いと、安定した動作が可能に なります。

駆動トルクとパワーバランス

オープン端子の発電機モードでモータを駆動する と、回路に電流が流れず、機械的摩擦によって駆動 ユニットに損失が生じます。この状態は無負荷での モータ動作に似ています。

モータのトルク(M)は、次の式で表されます。

発電機は、負荷抵抗(RLoad)で端子がクローズの際に、 必要な負荷電流を巻線に流せるトルクで駆動する 必要があります。モータの選択肢は、発電機モード でシャフトにかけられるトルクの最大量によって制 限されます。ブラシ付きDCモータの動作は、使用可 能な最大連続トルク(熱的および機械的)と最大連 続回転数(機械的および電気的)によって制限されま す。シャフトにかかる発電機トルクに対応しながら 回路を通じて最大電流を管理できるモータを選択 することは、望ましい荷重点に基づいてモータのサ イズ決定を行うプロセスに似ています。

定常状態において、発電機への機械的入力電力は 次の式で表されます。

任意の負荷電流と端子電圧における電気的出力電 力は、図2に示す斜線の下にある長方形のエリアで 示されます。

出力電力は、UTがUiの半分になる時に最大となりま す。この時、負荷電流ILoadは最大電流IMaxの半分に なります。

つまり

発電目的で使用するモータは、電力のみを考慮して 選択してはいけません。PMaxを、発電機からの必要な 電気的出力電力よりも常に大きくするのが理想的で す。図2のグラフの荷重点は、負荷電流の値に応じ てX軸方向に動きます。そのため、実際の電力出力 (PActual)は、PMaxよりも小さくなる場合があります。発 電機として使用するのに適切なモータを選択する際 は、PMaxではなくPActualを考慮する必要があります。そ のため、より高い定格のモータを選択する必要性が 生じます。

発電機の効率は、次の式で求められます。

発電機として使用するモータの選択

例1: この例では、発電機用途にポルテスキャップの Athlonixシリーズブラシ付きDCモータを選択する場 合について検討します。209Pコイルを備えたAthlonix シリーズ17 DCTの逆起電力定数は1.17mv/RPMです。 モータの特性曲線を図3に示します。このモータを 発電機としてシャフト回転数5,000 RPMで使用する場 合、出力の逆起電力は5.85 Vとなります。(式1)

短絡状態で回路に流れる最大負荷電流は、次の式 で表されます。

このIMaxの値は、モータの最大連続電流(0.55 A)を超 えています。これは、モータの熱時定数と予想され るデューティサイクルによって決まる断続動作にお いて許容される場合があります。連続発電の動作で は、次の式で求められる負荷抵抗(RLoad)が推奨され ます。

ここで、IContはモータの最大連続電流です。

このため、発電機で3 Ωを超える負荷抵抗を使用で きる場合、209Pコイルは最大5,000 RPMの入力回転 数に対応できます。機械的または技術的な制限に よって負荷抵抗を使用できない場合、あるいは入力 回転数が5,000 RPMより高い場合は、他のコイルを 選択すべきです。たとえば、この要件を考慮すると、 コイル211Pがより良い選択肢となり得ます。

例2: 205Pコイルを備えたポルテスキャップ16C18 モータの逆起電力は0.70 mV/RPMです。回転数が 10,000 RPMの場合、端子でのオープン回路出力電圧 は7.0 Vになります。

短絡条件では、巻線を流れる最大電流が次の式で 表されます。

この値は、モータの最大連続電流(ICont)よりも小さく なります。そのため、外部の負荷抵抗を検討するこ となく、このモータをシャフト回転数10,000RPMで発 電機として使用することが許容されます。

さまざまなシャフト回転数における16C18モータの出 力特性を図4に示します。

網掛け部分が連続動作のエリアです。断続動作の 場合は、最大温度上昇、最大シャフト回転数、モー タの機械的制限、発電機の寿命など、さまざまな要 素を考慮する必要があります。

図5と6は、発電機電流が低い場合に、16C18モータ の効率が比較的高くなることを示しています。最大 出力電圧では、出力効率が50%近くになります。作 業点が最大効率のポイントに近い発電機を選択す るのが理想的です。それにより、システム内の損失 が最小となり、求められる出力電圧-電流特性をもた らすのに必要な機械的入力電力が少なくなります。

結論

ブラシ付きDCモータを発電モードで使用すると、モータとして機能させる場合よりも効率が下がるとしばしば誤解されます。しかし、モータ、負荷、動作速度を適切に選択することで、合理的な高効率が得られます。動作点を決定する際は、電気的要素と機械的要素を必ず考慮しなくてはなりません。タコメータ発電機、迫撃砲、環境発電など、さまざまな用途に適切なモータを選択する際は、広範な設計経験を有する知識の豊富なアプリケーションエンジニアがお手伝いします。

お客様のプロジェクトに最適なモータについて

図1 - DCモータを発電機として使用した場合の等価回路図
図2 - 負荷電流と端子電圧のグラフ
図3 - ポルテスキャップ17 DCTモータの動作範囲
図4 - 16C18モータの電流-電圧特性
図5 - 16C18モータの出力電力特性
図6 - 16C18モータの効率特性