車型ロボットにおけるモー ションソリューションの進化

はじめに

技術者や科学者はロボットが今後数年の内に、農業、病院、介護、建築など、さらには家庭内などにおいても、あ らゆる分野で活躍するようになり、私たちの生活に欠かせないものになると期待しています。多くの産業、特に精密 さが求められる産業において、ロボットは人間に取って代わる可能性があります。ロボットは人間では正確に行う ことが難しい作業をこなしたり、危険だと判断された状況で人間に代わって作業を行ったりするようになります。こ れらの多くの産業において、車輪駆動のロボットによるアプリケーションに大きな注目が集まるでしょう。

車型ロボットはモータ駆動の車輪で地面を自走します。この設計は歩行機構や脚を使用するよりもシンプルで す。また、車輪を使用することで、平坦であまり起伏のない地形における動作の設計、構築、プログラミングが容 易になります。車型ロボットには、低コストでシンプルなディファレンシャルステアリングが採用されているため、 消費者市場で人気を集めています。ロボットの車輪の数に制限はありませんが、静的および動的なバランスをと るには3つで十分です。車輪を増やすとバランスが良くなりますが、特に地形が平坦でない場合は、すべての車輪 を地面に接地するための補足機構が必要になります。モーションソリューションでは、モータとギヤボックスを組 み合わせて車輪を駆動させることで、トルク容量を増加させドライバビリティを向上させています。

本記事では、市場のニーズと需要、アプリケーション要件、選定基準、技術的な優位性と今後のロボットの進化 について説明します。

市場のニーズと需要

感染対策、医療サービス、医療廃棄物の運搬、生化学的検体の運搬、一般的な医療作業などでの使用におい て、病院ではロボットに対する需要は非常に大きいものになっています。COVID-19による世界的なパンデミック下 にある現在、その需要は何倍にも増えています。また、監視や軍事活動においてロボットが重要な役割を果たす 航空宇宙・防衛(A&D)産業からも需要が高まっています。今後の対象市場には、パイプラインの検査(水中システ ムなど)が挙げられます。パイプラインの検査では、走行ロボットが画像を撮影し、インフラの亀裂や不具合の特 定に役立てます。これらのアプリケーションで使用される製品が求められる主な要件は以下のとおりです。

コンパクトかつ軽量
高トルク
高耐久性(長い製品寿命)
低ノイズ(病院およびA&D)
高効率性と低消費電力

アプリケーション要件

(図1)ロボットに使用される代表的な製品は、コンパクトな遊星ギヤボックスを有するブラシ付きまたはブラシレスDC モータです。要件はアプリケーションによって若干異なる場合がありますが、モーションソリューションの一般的な 仕様は以下の通りです。

モータ: ブラシ付き/ブラシレスDCコアレスモータ
ギヤボックス構成: 遊星 - 2/3ステージ、30:1~120:1比
パッケージサイズ: < 直径40 mm
ギヤボックス出力トルク: 4~8 Nm
ギヤボックス出力速度 - 50~150 rpm

選択基準

モータとギヤの選択は、用途に応じたロボットを設計する上で重要な作業です。重要なポイントを図2に示します。

モータとギヤボックスの選定では、まずは製品に求める動作条件や最大条件を決めることです。モータ+ギヤボックスの設計と選択における最も重要な要素は、必要な速度とトルクがホイール出力で得られるか確認することです。

トルク
最初に必要な出力トルクを決めておくと、モータやギヤをスムーズに選択できます。車輪へのトルクは、ロボットの加速度、車輪の直径、運搬能力(一部のアクチュエータが故障したり、車輪がスリップした場合に、ロボット全体を引っ張るのに十分であること)、小さな斜面を登れること、障害物を乗り越えることができることなどを考慮して決定する必要があります。摩擦や効率性も考慮して、最終的なトルクを算出する必要があります。

速度
必要なトルクの決定後、次に車輪の回転速度を決定します。まず車輪の希望速度(つまり最終出力)を決定することで、モータとギヤを選択する準備が整います。一般的にロボットメーカーによりロボットが駆動する速度が決定されます。その際、車輪の直径によって、車輪の出力に必要な速度が決まります。

パッケージスペース
モータに必要となる基本性能特性を明確にしたら、次はモータの構成品(エンコーダ+ブレーキ+モータ+ギヤ)がロボットに適合するか、無理なく収納できるか確認します。エンコーダでモータシャフトの回転量を測定でき、ブレーキシステムでトルクを保持し、緊急時には動的に停止させることができます。ロボットに使われるエンコーダやブレーキには様々な種類があります。

電圧
動作電圧はモータへの電力供給に使用されます。通常、電圧が高いほどモータの速度能力が高まります。モータのデータシートでは電圧定数(逆起電力定数)1ボルトあたりのモータの回転速度を確認できます。

動作温度
多くの場合問題ではありませんが、モータ構成品が密閉されている場合、オーバーヒートに注意が必要です。ギヤボックスの温度範囲と潤滑剤の寿命には密接な関係があるため、時間の経過とともに性能を劣化させる恐れがあります。

重量
モータ選択時にトルクを決めるには、負荷質量を把握しておく必要があります。モータの選択時、質量の推定値 (可能であれば実際の質量値) が重要になります。推定質量に基づいて設計する場合、約25%の安全マージンを適用する必要があります。モータのデータシートではトルク定数を確認し、1アンペアあたりどのくらいのトルク出力が得られるかを把握することができます。

コスト
ギヤボックスは一から作った方が低コストで済むと思われる場合があります。しかし、新しいギヤの設計、組み立て、テストに時間をかけることを考えると、一般的なカタログからギヤボックスを入手したほうが経済的である場合が多いです。

精度/正確度/効率性
ギヤに対してどれほどの速度を要求しますか?ホイー ルモータでは、処理できる精度と正確度がやや低く なることが多くあります。これらのギヤモータは、様々 な地形やトルクプロファイルで使用されます。また、す べての用途で高い性能(低ノイズや低振動など)が求め られるわけではないため、低い精度でも許容されてい ます。しかし、ロボットアームや装置では、より精度が 高く正確な低バックラッシュのシステムが必要になる ケースが多くあります。

信頼性とノイズ
ほとんどのアプリケーションにおいて信頼性の高さが 重要な要素であるため、モータ構成品は求められる作 動点で耐えうる必要があります。監視ロボットのような 重要な用途では、高い信頼性に加えて、低ノイズが重 要な要件となるため、モータとギヤボックスは両方の要 件を満たす必要があります。

例をご紹介します。ポルテスキャップは車型ロボット 用途向けに、モーションソリューションの製品仕様を 次のように設計しています。

モータ詳細: ブラシ付き DC 35 GLT
メインギヤボックス: - 遊星ギヤボックス、 3ステージ、スパー、総ギヤ比99.8

技術的優位性

車型ロボットの多くには、個別に駆動する車輪で移動 するディファレンシャルステアリングが採用されていま す。2組の動力付き車輪を持つ4輪駆動のロボットはバ ランス性に優れた設計となっています。車輪は各ペア ごとに同じ方向に回転させることができます。ペアが同 じ速度で走らないと、ロボットの動きが遅くなり、まっ すぐ走れなくなります。理想的な設計では、自動車で 使用されているものと同様のディファレンシャルステア リング機構を備えており、ロボットを左右に回転させる ことができます。これに必要なモータは1つだけです。 また、ディファレンシャルステアリングではなく、車輪 を独立して駆動させるモータを使用したロボットの機 構もよく見られますが、この場合は各車輪を駆動させ るために個別モータが必要になります。

ソリューション全体の仕様は以下のように定義されて います。

パッケージ: 直径32 mmx長さ115 mm
ギヤボックス出力トルク能力: 8 Nm
ギヤボックス出力速度: 80 rpm
想定製品寿命: 100時間
最高温度: - 125 deg C

ポルテスキャップ社の製品は、小型、高いトルク搬送能 力、高耐久性の点で優位性があり、複数の車型ロボッ トの用途に対応することができます。(図3)

車型ロボットにおける今後の進化

車型ロボットの大きな欠点は、岩場や急な下り坂、摩 擦の少ない場所をうまく移動できないことです。こう いった制約を克服できるロボットの開発への期待が 日々高まっています。そのためには、走行機構(差動駆 動)、4輪スキッドステア、2輪差動駆動+従動キャスタな ど、ロボットの機構を変更する必要があります。そのた め複雑さが増し、詳細な検討が必要となりコストにも 影響します。

アーキテクチャー全体に大きな変更を加えることのな い、モーションソリューションの最適化が強く求めら れています。本記事では、耐久性、効率性、低ノイズな ど、車型ロボットの性能にメリットをもたらすモーショ ンソリューションによる改善点を紹介しています。

新しいベアリングソリューション - ニードル ローラーベアリング(図 4 ) - 焼き付きによる損 傷を防ぎ、遊星ピン上で遊星ギヤのスムーズな 回転を実現します。
Optimum Gearbox - ノイズを低く抑えるために、ねじり力が小さいギヤ歯の組み合わせ(図 5)を採用してい ます。
高度なFEAベースの解析 - 設計の初期段階で潜在的な不具合を特定し、予防するのに役立ちます(図6)。
高度な騒音シミュレーション - 騒音が最重要課題となる重要な用途において、騒音を予測し設計を最適 化することができます(図 7)。

お客様のプロジェクトに最適なモータについて

図1 - 一般的な車型ロボットの差動軸機構を理解する
図2 - モータ+ギヤボックスの選択基準
図3 - モータ+ギヤボックスの組み合わせ
図4 - 新しいベアリングソリューション
図5 - 低ノイズギヤボックスソリューション
図6 - 高度なFEA解析
図7 - 高度な騒音シミュレーション