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この白書は、暖房・換気および空調(HVAC)シス テムで使用されるガスバルブを作動するため に使用できる各モータ技術を取り上げ、それ らの特徴を比較することを目的としています。HVAC システムには、流量の調節や停止を行う低コストの 電気制御バルブが含まれ、一般的には低速時に中ト ルクが求められます。これらのバルブを作動するた めのモータ技術はそれぞれ、特定用途の要件に応じ てメリットとなり得る固有の特性を有しています。
はじめに
HVACシステムは、閉鎖空間の温度や空気質を調整す ることにより、冬は暖かさ、夏は涼しさを維持するた めに使用されます。暖房システムには、ボイラ、ポン プ、ラジエータ、メータおよびその他のコンポーネン トが含まれ、一般的に天然ガスの燃焼によってシス テムを駆動させて空気や水を暖め、それらが空間を 循環することで温度調節を行います。
HVACシステムの動作は、検出装置や調節装置による ガス/液体流量の正確な制御と計測に基づいて行わ れます。調節装置は一般的に、流量制御バルブや隔 離(遮断)バルブを使用するなど、さまざまな方法に よって構築できます。
流量制御バルブの基本的な動作原理
以下に示す流量制御バルブの例では、バルブステ ムがバルブ本体の内部を上下に移動します。その結 果、ニードル(ステムの先端にある封止要素)によって 流量が希望のレベルに制限されます。ステムとボー ルを用いたバルブでは、バルブ軸の周りを回転する ボールに切欠き部があるため、ある位置では全流量 を流し、ステムが封止位置に回転すると流量が変化 します。(図1)
バルブステムの移動は、手動操作(オペレータがスク リューとニードルの位置を調整)できるように設計す ることも、モータと駆動システムでアクチュエータを 制御してステムを移動させるよう電子的に行うこと も可能です。
ガスバルブアクチュエータ向け電気モーションシス テムの種類
ガスバルブアクチュエータの性能/コスト要件に適 合するモーション技術は、ブラシ付きDCモータまた はDCステッピングモータのいずれかに絞られます。 どちらのモータもこの用途に必要なトルクと速度を 満足しますが、完全なモーションソリューションを 開発するために、システム全体の構成を決定する必 要があります。電気モーションシステムは、幅広いレ ベルのモータと位置管理システムで構成されます。 システム設計の意図に基づいて選択すべき選択肢 を以下に示します。
システム構成全体に使用可能な選択肢
モータ技術 | ブラシ付きDC |
ステッピング | |
アクチュエータ動作の タイプ | ロータリ |
リニア | |
位置管理システム | クローズドループ制御 |
オープンループ制御 |
ガスバルブアクチュエータに対しては、上の表に示 したモータ技術およびモーションシステムと位置管 理システムのタイプの組み合わせによって、モーショ ンソリューション全体の複雑さとコストが決まりま す。電気モーションシステムのさまざまな選択肢を 以下で説明します。
• | ブラシ付きDCモータは、(ロータリ動作をリニ ア動作に変換するために)外部送りねじ機構 を追加することで、ロータリ動作またはリニア 動作をもたらします。どちらの場合でも、あら ゆる位置決め要件に対してクローズドループ 操作用のエンコーダが必要となります。 |
• | ステッピングモータは、外部送りねじ機構を 追加することで、ロータリ動作またはリニア動 作をもたらします。どちらの場合でも、ドライ バを直接使用したオープンループ制御が可能 です。クローズドループ制御が必要な場合は、 エンコーダも必要となります。 |
• | リニアステッピングモータは、送りねじを堅 牢な単一パッケージに統合し、ドライバを使 用したオープンループ制御によってリニア動 作を直接出力します。 |
それぞれのモータ技術に使用可能なシステム構成
モータ技術 | ブラシ付きDC | ステッピング/ リニアステッピング |
動作のタイプ | ロータリまたは 外部リニア | ロータリ、外部リニア、 または統合リニア |
位置管理システム | クローズド | クローズド/オープン ループ |
トルク/速度 | 非常に広い範囲 | 限られた範囲 |
コスト | 中から高 | 低 |
ガスバルブアクチュエータ向けのモータ選択
DCモータ
DCモータは、DC電力が流れると回転する単純な電 動機械です。モータを駆動させるため に複雑な電子機器は不要です。(図2) ただし、用途に応じてリニ ア動作が必要な場合は、 ロータリ動作をリニア 動作に変換するため、DC モータのソリューション に追加の送りネジと ギヤシステムが必要と なります。また、DCソ リューションでは、リ ニア位置を正確に制 御するために、光学セ ンサやエンコーダに よるフィードバックメ カニズムも必要とな ります。モータのロータは慣性が高いため、位置精 度を改善するためにブレーキシステムを追加する設 計技師もいます。
一般的に、(ガスバルブの用途に最適な) DCモータの 出力速度は1,000~10,000 rpmであり、最大160 mNmの トルクを発生します。用途の使用荷重点に応じて、ギ ヤボックスや送りねじシステムを追加することができ ます。
ステッピングモータ
ステッピングモータ
は、ステップ角と呼
ばれる小さくて等し
い複数の増分で回
転するDC電気モータ
です。(図3) ステッピング
モータを駆動させる
には、専用のコント
ロールユニットが必
要です。ステッピン
グモータには、その
構造や設計によって
固有の特性があり、
それが特定用途でメ
リットとなる場合が
あります。モータの
サイズが適切であれば、モータを高い精度でオープ
ンループ制御できるため、ステッピングモータを(個
別のステップ角で制御する)ポジショニング制御装
置に組み込むことができます。さらに、ステッピング
モータの設計により、ディテントトルクを使用して位
置を保持することが可能となり、始動、停止、逆転
の用途に対し優れた応答性を示します。
用途に応じてリニア動作が必要な場合は、ロータ リ動作をリニア動作に変換するため、ステッピング モータのソリューションに追加の送りネジとギヤシ ステムが必要となります。
ステッピングモータは一般的に、最大出力速度 1,000 rpmで使用でき、最大トルク170 mNmを発生し ます。実際のトルクと速度は、 駆動モード(フルス テップ、ハーフステップ、マイクロステップ)によっても 変わります。用途の使用荷重点に応じて、ギヤボック スや送りねじシステムを追加することができます。
ステッピングリニアアクチュエータ
ステッピングリニアアクチュエータは、送りネジが付
いたキャンスタック型ステッピングモータと一体型
送りネジで構成されています。(図4) 一体型送りネジは、コ
ンパクトなパッケージで直接リニア動作を行います。
ステッピングリニアアクチュエータの送りネジは、電
気パルスが流されると個別の
ステップ角の増分で上下
に動きます。ステッピン
グリニアアクチュエー
タを使用する重要な
メリットのひとつ
は、オープンルー
プシステムにおい
て正確に制御で
きる点です。つま
り、位置決めを行
うために、高額な
フィードバック装
置やブレーキシス
テムは不要です。
一般的に、リニアアクチュエータは最大出力速度80 mm/秒で使用でき、最大100 Nの力を発生します。実 際の力と速度は、送りねじの効率性と駆動モード(フ ルステップ、ハーフステップ、マイクロステップ)によっ ても変わります。用途の使用荷重点に応じて、ギヤ ボックスを追加することができます。
結論
各モーションソリューションの比較
パラメータ | DCモータソ リューション | ステッピン グモータソ リューション |
速度 | *** | ** |
力/トルク (低速時) | *** | ** |
動作温度範囲 | ** | ** |
寿命 | ** | *** |
コスト効率 | * | *** |
モータ操作の 単純さ | *** | ** |
位置制御の容易さ | * | *** |
効率 | *** | * |
HVAC用途でバルブ作動用のモータを選択する際の主な考慮事項:
ガスバルブの用途は、バルブステムのタイプや希望する動作と精度によって異なります。以下に示すさまざまな要件に応じて、最適なソリューションが決まります。
• | 必要な最大トルク/力および動トルク/力 |
• | 速度要件: バルブ用途では一般的に、低速時の力/トルク要件が必要となります。 |
• | ソリューション全体の価格 |
• | コントロールシステム: 一般的にクローズドループ制御は不要です。 |
• | 使用環境での動作温度 |
• | 作動に必要な動作タイプ(ロータリまたはリニア動作) |
• | 交換までに期待されるソリューションの寿命 |
• | 必要なリニア/ロータリ分解能 |
• | 使用可能な最大電流/電圧 |
使用可能なモーションソリューションとHVAC用途の要件に基づき、ロータリ用途にはステッピングモータ、リニア用途にはリニアステッピングモータを使用したモーションソリューションが最適となります。