ポルテスキャップは新たに小型モータ研究開発施設を開設し、カスタマイズ能力を向上させました

小型モータモーションソリューションの設計・開発は、医療機器やロボット、産業用電動工具のアプリケーションなど、高い性能と信頼性が要求される環境で欠かせないものとなっています。概念設計、開発、試験は、厳格で特定のアプリケーションの条件に適しているだけでなく、要求の厳しい市場のニーズを満たすのに十分な速さである必要があります。そのため、世界各地のOEMメーカー向けに小型モータを開発するポルテスキャップは、新たにエンジニアリングラボを開設し、研究開発能力を向上させました。

COVID-19のパンデミックでは迅速な対応が求められました。ウイルスに感染した患者の治療には人工呼吸器の使用が欠かせませんが、需要が高く急を要したため、需要のギャップを迅速に埋めるための新たな機械設計が必要でした。インドの人工呼吸器OEMメーカーがポルテスキャップのムンバイチームに求めたものは、高速でありながら高い信頼性を持つモーションソリューションでした。ポルテスキャップのムンバイ施設では、少し前から新しいエンジニアリングラボが稼働を開始していたため、適切な小型スロットレスブラシレスDC(BLDC)モータ を設計、テストして迅速に生産に移行できました。

「ポルテスキャップはスイス、米国、インドに研究開発の専門技術と施設を有していますが、新たにムンバイにエンジニアリングラボを開設したことで、生産用の新製品を迅速に開発する能力が向上し、お客様の市場投入までの時間が短縮されました」とポルテスキャップのグローバル研究開発責任者のDheeraj Saxenaは述べています。

新しいエンジニアリングラボは、世界中の市場で小型モータの設計を強化するために開設されました。ムンバイのエンジニアリングラボは、ポルテスキャップのインドの生産施設に近接した理想的な立地にあります。ムンバイのエンジニアリングラボチームが持つ専門知識を生かし、世界向けに販売を行うインドの顧客向けソリューションの開発に取り組むほか、世界中で使用される製品を生み出すポルテスキャップのグローバルな研究開発能力を支援していく予定です。

新しいラボでは、大規模市場向けの標準設計に合わせた小型モータを開発予定で、ムンバイチームが新製品の市場投入に関し、ポルテスキャップのグローバルな研究開発能力を支援します。また、新しいラボではカスタムOEMプロジェクトにも重点が置かれます。

「ポルテスキャップの真髄はカスタムモーションソリューションを提供することであり、そのためにお客様と密接に協力しています」とDheerajは述べています。「スイスと米国のチームにはそれぞれ独自の専門技術があり、ムンバイの新しいエンジニアリングラボが世界中のお客様のカスタマイズ開発をサポートする予定です 」

米国では、ポルテスキャップは外科手術用モーションソリューション市場における主導的地位を維持するために、スロット付きBLDCカスタムモーションソリューションの設計・開発に注力しています。一方、スイスチームは、ムンバイで製造されるBLDCスロットレスモーションソリューションモータの設計・開発に取り組んでいます。

新しいエンジニアリングラボが開設されたことで、ムンバイチームは、DCとステッピングモーションソリューションの支援に加え、世界のロボットと監視市場向けのBLDCスロット付きフラットモーションソリューションについてもサポートする予定です。これには外科用ロボットや外科用ツール、人工呼吸器、医療用注入システム、産業用電動工具などのアプリケーションも含まれています。また、新しいラボは新興市場に焦点を当て、ポルテスキャップのコンセプトである「Dream, Develop, Deliver(夢を描き、開発し、提供する)」の一部である新たな需要に対応するための技術活用を実現する予定です。

「私たちは理論的設計や試作、製造を網羅した開発を行っています。これにより、コンパクトなアプリケーションに適した高性能で信頼性に優れたモーションソリューションを開発できるほか、お客様のための小型モータパッケージの開発を加速できます。新しいラボはこのために不可欠なものです」とDheerajは説明します。

標準製品においても重要ですが、カスタム開発において特に重要になるのが概念実証段階です。その一端として、ムンバイの新しいラボに3Dプリンターが設置され、チームが設計と試験を迅速に実行できるようになりました。標準部品をカスタマイズして短納期で提供できるようになったほか、カスタマイズポートフォリオの既存プロジェクトを活用したり、まったく新しい設計を作成したりできるようになりました。

Dheerajは次のように述べています。「3Dプリンターを使用することで、他の方法では製造が困難だった部品を、新素材を使い、非常に素早く製造できるようになりました。この作業を社内で実現できたことで、お客様の開発スピードにも確実に好影響を与えると思います」「また、新しいラボのおかげでポルテスキャップのグローバルチームがムンバイ工場からさらにスピーディに試作部品を受け取れるようになるため、世界中のアプリケーション開発がスピードアップすることが見込まれます」

ムンバイのエンジニアリングラボでは、生産に向けた概念やプロトタイプを検証するために、性能、トルク、騒音など、あらゆる小型モータの特性試験を行うほか、重要なアプリケーション向けのモータの長期信頼性を保証するための寿命試験を行っています。また、ポルテスキャップのカスタマイズ精神に基づき、新しいラボでは専用アプリケーションの現場条件を再現できます。仮想環境や実環境でのシミュレーション技術には、可変負荷での回転方向などの見地が含まれています。

「通常、ポルテスキャップは特定のアプリケーションのデューティサイクルに関連する性能試験や寿命試験に独自の設計と試験方法を使用します」とDheerajは説明します。「私たちは、お客様からのフィードバック、既存のアプリケーションの分析、過去の類似事例での経 験に基づき、性能と信頼性の特性を可能な限り忠実にモデル化するようにしています。そのため、結果は実際の現場での使用に非常に近いものとなっています」

新しいラボの設備には、さまざまな温度や湿度でモータをテストできる環境チャンバーや、外科用ハンドツールなどの滅菌アプリケーションのためのオートクレーブ試験機などがあります。さらにNVH(騒音・振動・ハーシュネス)チャンバーも設置され、さまざまな負荷サイクルに対応した分析が可能です。最新の試験技術に加え、新しいラボでは対象分野の専門家の力を借り、手順を最適化しています。

「ポルテスキャップにはギアの伝動や騒音、電磁設計、素材、信頼性などに関する専門家が揃っています」とDheerajは説明します。「彼らは分析手順に関する経験があるため、私たちは製品をより迅速に市場に投入できます。また、新しいラボでは、シミュレーション技術や音響モデリングなど、特定のお客様向けの問題解決にも注力しており、ポルテスキャップの特注アプリケーションに関する検証能力を向上させています」

新たな機能に加え、新たなエンジニアリングラボは、ムンバイチームが以前使用していたスペースと比べ、大幅にスペースが拡張されました。これにより、製品や複合素材の試験能力が向上し、お客様のためにさらに迅速にアプリケーションを検証できるようになりました。

「ポルテスキャップのスイスチームと米国チームには、設計や試作を行うスタッフを擁する素晴らしいラボがあります。私たちはインドの新たな施設と専門知識を生かしながら、グローバルチームを補完していきます」とDheerajは述べています。「私たちはお客様のソリューションの市場投入までにかかる時間を短縮するために、1つのチームとして問題解決に取り組んでいます。新しいラボは、ポルテスキャップが将来にわたり、お客様の課題を解決していくための進化の一過程です」