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今日の実験室環境において、特定の量の液体を測定・分注する際にはピペットが不可欠です。 実験室の規模や分注する量に応じて、以下のようなさまざまな種類のピペットが一般的に使 用されています。
- 空気置換ピペット
- 容積式ピペット
- ホールピペット
- 目盛り付きピペット
2020年、私たちは空気置換マイクロピペットが新型コロナウイルス感 染症(COVID-19)との闘いで重要な役割を果たすのを目の当たりにし ました。病原菌を検出するための試料調製用に使用されているのです (リアルタイムRT-PCRなど)。一般的に、手動または電動式という2種 類の空気置換ピペットが使用されています。(図1)
手動ピペットと電動ピペットの比較
空気置換ピペットを例にとると、ピストンがピペット内部を上下に移 動し、気柱に負圧または陽圧を発生させます。それにより、チップ内 の気柱がピペットの使い捨てでない部分と液体を分離するため、使い 捨てのピペットチップを使用して液体試料を取ったり出したりするこ とができます。(図2)
ピストンの移動は、オペレータが手動で行う ように設計することも、電動式の方法を使用し て、ボタン制御でモータがピストンを動かすよ うにすることも可能です。
手動ピペットの制約
手動ピペットを長期間使用すると、オペレータ が不快感を感じたり、身体障害を負ったりする 場合があります。液体を分注してピペットチッ プから出すのに必要な力に、多くの場合数時間 にもわたる繰り返しの動作が加わると、特に親 指、肘、手首、肩などの 関節にいわゆるRSI(反復 運動損傷)が発生するリ スクが増加します。
手動ピペットでは液体を 出すために親指でボタン を押す必要があります が、電動ピペットではボ タンが電子的にトリガー されるため、人間工学的 に優れた設計となってい ます。(図3)
電動ピペット
電動ピペット(電動ピペット)は、手動ピペッ トに代わる人間工学に基づいて設計された器具 です。電動ピペットは、精度と正確度を用いて 試料の処理能力を工場する効率的な方法です。 ピペットで取るためのボタンを親指で操作し、 手動で容量を調節する従来のピペットに代わる 電動ピペットには、容量を調節するためのデジ タルインターフェースに加え、吸引と分注を行 う電動ピストンが搭載されています。(図4)
電動ピペットのその他の利点:
特性 | ユーザのメリット |
---|---|
ピペットで液体を取る 度に分注に必要な力を 低減 |
疲労の少ない作業で身 体障害のリスクを低減 |
親指で操作する手動の ピペットボタンが不要 |
人間工学に基づいた設 計で親指にかかるスト レスを軽減 |
カラータッチディスプ レイなどのデジタルイ ンターフェースを使用 |
重要パラメータを明確 に表示し、使用可能な ピペット機能にすばや くアクセス |
自動チップ排出、チッ プ容積の自動検出、連 続マルチディスペンシ ングといった高度な機 能が使用可能 |
快適で安全な作業、間 違いのリスクを低減、 より高い効率を実現 |
電動ピペット用のモータの選択
ピペットで液体を取る作業は通常、複数の手 順で構成されるプロセスの最初の手順であるた め、わずかな液量の不正確な計量や計量ミスが プロセスを通して繰り返されると、最終的に全 体的な正確度や精度に影響します。
精度と正確度について
精度は、ピペットで同じ量を複数回分注する ことで得られます。正確度は、ピペットで目標 の量を間違いなく正確に分注することで得られ ます。どちらか一方のみを得ることも可能です が、ピペットを使用する業界では精度と正確度 の両方が求められます。実際、この重要な要件 によって実験の結果を再現可能なものにするこ とが可能となります。
電動ピペットはモータで動作します。モータ は、精度と正確度はもちろん、エンベロープサ イズ、電力、重量などその他の重要な要因にも 大きく影響します。ピペットの設計技師は、主 にリニアアクチュエータ(ステッピングモー タ)やDCモータを選びます。結局のところ、ス テッピングモータにもDCモータにも長所と短所 があります。
DCモータ
DCモータは、DC電力が流れると回転する単純な電動機械です。モータを動作させるために複雑な電 子機器は不要です。ただし、電動ピペットの直線動作の要件を考慮した場合、DCモータのソリュー ションには、回転動作を直線動作に変換して必要な力を供給するために追加の送りネジとギヤシステ ムが必要となります。また、DCソリューションには、線形ピストンの位置を正確に制御するために、 光学センサやエンコーダの形でフィードバックメカニズムも必要となります。ロータの慣性が高いた め、位置の精度を改善するためブレーキシステムを追加する設計技師もいます。DCモータを使用する ことにより、ピペットシステムの全体的な正確度と精度は強化されますが、DCモータの導入は費用 のかかるソリューションです。
ステッピングモータ
一方、リニアアクチュエータ (ステッピングモータ)は、 統合しやすく、高い性能を発 揮し、安価な価格であること から、多くの設計技師が好ん で使用しています。リニアア クチュエータは、送りネジ が付いたキャンスタック型ス テッピングモータと一体型送 りネジで構成されています。 一体型送りネジは、より小さ なパッケージで直接直線動作 を行います。(図5 図6)
DCモータと異なり、リニアア クチュエータの送りネジは、 電気パルスが流されると個別 のステップ角の増分で上下に動きます。リニアアクチュエータを使用する重要なメリットのひとつ は、オープンループシステムにおいて正確に制御できる点です。つまり、位置決めを行うために、高 額なフィードバック装置やブレーキシステムは不要です。一般的に、ステップ角が小さくさまざまな 送りネジピッチを選択できると高分解能のポジショニングが可能となり、リニアアクチュエータをマ イクロステップモードで駆動することで、それをさらに向上できます。
適切なサイズでない場合、ステッピングモータがステップ角を失い、不正確な分注につながるおそれ があります。ただし、駆動システムに対し正確なモータ出力を行うようにすることで、この問題は簡 単に修正できます。
以下は、モータを選択するにあたり、主に考慮すべき点の一部です。
- 速度-力曲線から最低50%の安全率を維持すること
- 操作中、低い共振周波数点を避けること
- バックドライブ、急な動作、外部負荷の変更を避けること
結論
要約すると、この用途に対しては、リニアアクチュエータ(ステッピングモータ)にもDCモータにも それぞれ独自のメリットがあります。内蔵フィードバックメカニズムを使用するDCモータの概念が改 善された精度と正確度を実現する一方、ステッピングモータの概念は最も費用効率の高いソリュー ションであり、出力パルス数と周波数を変更するだけでオープンループシステムにおいても正確な制 御を実現できます。用途に合った適切なサイズであれば、ステッピングモータは精度が高く正確な分 注に必要となる信頼性を実現できます。