医療機器開発におけるモータサプライヤー の効果的な管理

医療機器メーカーは、新製品や改良された 製品を競合他社に先んじて医師や患者に 届けなければならないという、極度のプ レッシャーに晒されています。医療機器を発売す るまでの全プロセスには数年を要しますが、その 大部分はツールや部品のリードタイム、市場からの フィードバック、寿命試験、規制当局の承認で占め られます。機器の設計者は多くの場合、これらの 情報を入手できるまで待ってから設計を更新しな くてはならないため、新製品完成までのスケジュー ルが厳しくなります。

管理部門からプロジェクトのゴーサインが出た ら、直ちに内部レビューと市場調査用に概念実証 (POC)サンプルを作成する必要があります。財務 部門が予算を承認してマーケティング部門が目標 仕様を確認するまでに数週間から数か月を要する 場合があり、設計者はその後で、追加試験用にさ らに堅牢で洗練された試作品を早急に作成しなく てはなりません。このサイクルは、検証試験や規制 当局の承認過程でも繰り返されます。

,p> 残念なことに、このような時間的制約によって最 終結果が損なわれてしまう場合があります。早期 段階の期限を守るために一般的に用いられる方法 は、次の試作段階でカスタム部品を使用して設計 を微調整することを念頭に置き、すぐに入手できる 標準的な部品でPOCサンプルを設計することです。 しかし、その後のサイクルでも同様の時間的制約 が生じるため、カスタム部品のリードタイムも重く のしかかります。その結果、最も基本となる試作品 に妥協が生じ、それがしばしば生産工程にも反映 されるため、製品の性能が低下して全体のコスト が上昇することとなります。

 

妥協を許さず最適な製品を提供するには、部品の 進展をコンセプト段階から発売まで管理できるサ プライヤーを選ぶ必要があります。そのようなサプ ライヤーはPOC開発品にほぼ近い標準的な試作品 を迅速に提供し、その後のサイクルに向けて迅速 な仕様・設定変更を行い、生産に適した価格と品 質を確保できなくてはなりません。サプライヤーか ら見ると、自社製品が使用されればコンセプト調 査から学べることも多く、全体像を考慮しながら 各段階の作業を実施できるため、プロセス全体を 通して一貫したサプライヤーを使用することが非常 に望ましくなります。生産工程に関与しないサプラ イヤーをPOCのために選択しなければならない場 合は、その時点で戦略的サプライヤーを選ぶこと も極めて重要となります。戦略的サプライヤーが 効果的であれば、機器の設計者はPOC設計への取 り組みと仕様・設定変更に関する作業開始を並行 して行うことで、カスタム部品を組み込むための準 備ができます。

多くの医療機器では、重要な部品に対して複数の 入手先を確保するという当初の目標を達成できな いという現実によって、開発の初期段階におけるサ プライヤー選択の重要性が損なわれています。期 限が近づく中で問題が発生すると、設計者は可動 部品をできるだけ削減することを余儀なくされま す。同じ仕様と納期を満たす競合サプライヤーを 探そうとしても、滅多に解決できない課題が増え るだけです。その結果、医療用製品は一般的に、各 部品を供給するサプライヤーが1社のみの状態で 規制当局の承認を得ることとなります。生産開始 後に2社目のサプライヤーを承認しようとしても、 規制当局への再提出がしばしば必要となり、サプ ライヤー候補は、高コスト、資源集約化、リスクな どの理由で管理部門から拒否される場合が多くあ ります。もちろん、2社のサプライヤーを承認すると 開発コストが2倍となり、量産時のボリューム価格 に適用される数量は減少します。

2社のサプライヤーを承認したりプロセスのいずれ かの段階でサプライヤーを変えたりすることが難 しい場合は、以下の条件に基づいてコンセプト段 階で戦略的サプライヤーを選択することが重要と なります。

慎重に選択され、POCビルドに向けて最適化 された標準部品を数日以内に出荷できること
一般的な落とし穴を予測・解決できる業界経 験を有し、設計改善の提案などでも貢献でき ること
あらゆる段階で顧客と協力するために、設計 者や製造技師がすぐに対応できること
試作および新製品開発の能力を有し、医療 機器開発の独自要件に対応できる体制を整 えていること
業界をリードする医療機器メーカーの品質監 査にも頻繁に合格する、しっかりとした検証・ 変更管理プロセスを有した施設であること
目標生産価格を実現するための明確な計画 を有していること
製品設計を制限しない幅広い技術オプショ ンを有していること

このようなサプライヤーの能力を十分に活かすに は、コンセプト段階、さらにはアイデア出しの段階 で関係を構築し始める必要があります。適切なサ プライヤーは、最適な道筋を選択するための貴重 な見識を最初からもたらすことができます。サプ ライヤーの担当者と率直な意見交換をほんの数 時間行うだけで、その後何倍もの設計時間を短縮 し、開発期間全体を数か月も削減し、最終的によ り最適化された価値ある製品を市場に投入できる ようになります。

戦略的サプライヤーとコンセプト段階から協力す るメリットを説明するため、機器の設計者が医療 用製品に使用するモータのサプライヤーを選択す る例を以下に示します。設計者は3週間でPOCを構 築し、6か月以内に試験を完了して規制当局への 提出を行い、2年以内に量産開始できるようにし なくてはなりません。POCの期限があるため市販 のモータを使用する必要がありますが、設計者が 知っているサプライヤーをコンセプト段階で選択 することにより、必要なカスタムバージョンを入手 しつつ生産に適した価格と品質レベルも満足でき ます。

最初の連絡から数日以内、場合によっては数時間 以内にモータサプライヤーの設計技術者と電話会 議を行い、設計の長期目標を話し合います。サプ ライヤーは業界経験に基づき、1週間以内に納品 できる標準モータだけでなく、用途の要件にすで に適合しているモータも推奨しました。一般的な カスタマイズ依頼を用途向けの製品に反映するこ とで、最終の設計基準により近いPOCの構築が可 能となります。その結果、設計が凍結する前のサイ クル追加を回避でき、数週間または数か月もの時 間に加え、不必要な設計労力と多額の費用も削減 できる可能性があります。必要となる残りの仕様・ 設定変更(出力シャフトの構成、巻線やギヤ比、 フィードバックシステムの調整など)は、この最初 の話し合いで計画されるため、機器の設計者は POC試験における違いを把握できます。

統一された開発戦略がある場合、設計作業および リードタイムの長い部品やツールの手配を先行し て開始できるため、POC試験が完了すると、モータ の戦略的サプライヤーはカスタム試作品をわずか 4週間で納品できます。そのため、機器の設計者に は製品設計を行う十分な時間が生まれ、規制当 局に提出するまでの6か月間、モータの設計を繰り 返したりその他の問題を解決したりすることが可 能となります。試作の各サイクルで試験が完了する と、モータのサプライヤーは技術者を顧客の作業 現場に派遣し、モータやシステムの詳細な設計レ ビューを行います。

生産に移行する段階になると、モータのサプライヤーが設計を実行に移すことが確認されます。この時点でサプライヤーを変更する必要が生じると、新たなサプライヤーは設計変更なしで用途の独自要件に適合することが難しくなり、規制当局の承認を得る予定が狂ってしまう可能性があります。最終的に、カスタマイズされたモータが正しく組み込まれると、出力や効率性を最大化しつつ余分な部品を排除できるため、コストやサイズ、複雑さが低減されます。また、モータ準備の各サイクルを継ぎ目なく移行できるため、開発期間全体も短縮でき、予期せぬ事態が機器の設計サイクル全体に波及する可能性も排除できます。

ポルテスキャップは、手術用電動工具、薬物注入ポンプ、人工呼吸器といった医療用途向けに、精密モータ、ギヤヘッド、エンコーダなどのアセンブリを製造しています。当社の製品およびサービスは、本書で述べたようなメリットをお客様にもたらすよう、慎重に開発されています。

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図1 – スケジュールの制限