小型モータアプリ ケーションにブレーキを 組み込む方法

小型モータアプリ ケーションにブレーキを 組み込む方法

DC小型モータのアプリケーションでは、電磁ブレーキを使用して荷重の保持、制動、減速を行います。ブレーキがな いと、たとえ電圧や電流の供給を絶ってもモータは勝手に回り続けます。あるいは、加わる力に負けて位置が保てな くなります。別のトルク制御装置を使用しても構いませんが、電磁ブレーキは精度が高いうえに、小型で、信頼性に 秀で、エネルギー効率に優れ、しかもコスト効率が高いという特長を兼ね備えています。

さまざまな産業分野、医療分野でDC小型モータを一定の停 止位置に保持する手段としては、固定した界磁コイルを使 うのが一般的です。この界磁コイルが電磁石として働くこと で、荷重の制動または保持に必要なトルクを生み出します。 界磁コイルの電磁気力により、電機子と構造物との接触、 離脱を制御します。このブレーキ機構の特徴は、DCモータの シャフトに取り付けられた中空シャフトです。これにより、小 型化が可能となります。

ブレーキには、界磁コイルに電流が流れているときだけ働 く励磁作動タイプのブレーキがあります。このタイプのブ レーキは、大きな荷重を保持する必要のないときや、電源を オフにした後に保持トルクが不要な場合に用いられます。 逆に、無励磁作動タイプのブレーキもあります。このタイプ のブレーキは、電磁石に電流が流れているとき以外は常 にブレーキが掛かります。そのため、用途によっては無 励磁作動タイプのほうが本質的に安全です。

スプリング式ブレーキは、無励磁作動タイプのブレーキ です。停電時や緊急停止が必要な場合に、荷重を自動 的に停止して保持する手段として使用されます。このタ イプのブレーキは、圧縮スプリングによって制動力が加 えられ、ブレーキの解除は一般的に手動制御で行いま す。このブレーキには、最速で回転しているモータに制 動を繰り返し掛けてもトルクが弱まらないという長所が あります。また、スプリング力の要件に応じて電圧定格 や摺動摩擦材などのカスタマイズが可能です。スプリン グ式ブレーキの短所は、バックラッシュが生じる場合が あることです。バックラッシュが生じると、制動や保持 の精度に影響が出ます。

頻繁にブレーキを掛ける場合はもちろんですが、移動 荷重の保持が必要な場合でも、永久磁石を利用した無 励磁作動タイプのブレーキを使用してください。そうす れば、磁気作用によってブレーキが掛かり、電気によっ てブレーキが解除されるため、電力が遮断された場合 でも荷重が安全に保持されます。ブレーキに電圧や電 流が印加されると、コイルが電磁石と化し、永久磁石の 磁力線と反対に作用する磁力線が生じます。この作用 によって電機子が解放され、エアギャップが生じて荷重 シャフトが回転できるようになります。また、電圧や電流 を増やしても、制動力を正確に制御できます。オン、オフ の切り換えしかできないスプリング式ブレーキとは対照 的です。

永久磁石式ブレーキには可動部品がないため、超高速 動作が可能です。スプリング式ブレーキとは異なり、電 機子、スプリング、ハブの間の接続が固定されているた め、バックラッシュが生じません。そのため、正確な制御 が可能になります。制動の最中には熱が生じるため、ブ レーキの寸法を適切に設定しないと、摩擦、荷重、トル クの各要件が満たせません。永久磁石式ブレーキには 安定した一定の電流が必要なため、高温や温度変化の 激しい環境など、電流変動を招きやすい条件で使用する 場合には、前もって慎重に検討する必要があります。

永久磁石式ブレーキは正確な制御が可能なため、ロ ボットアームの関節によく適しています。バックラッシュ がまったく生じないため、トルクの保持はもちろん制動 も正確に行えます。DC小型モータの応用例としては、自 動ブラインドの制御が挙げられます。ここでは、保持ト ルクに対する安全性が求められます。無励磁作動タイ プのブレーキでも、自動的に作動できるようにしておけ ば、電力が絶たれたときにブラインドの位置がモータで 保持されます。

ポルテスキャップのエンジニアは、DC小型モータを用 いたブレーキソリューションをカスタムOEMアプリケー ションに組み込む作業を普段から行っています。具体的 な要件に対して最も効果的な技術と機能を提案するだ けでなく、厳しい寸法規定と仕様も確実に満たします。 そして、開発から量産へ移行する前に、設計、ラピッドプ ロトタイピング、テストを組み合わせて安全性と精度の 両立を図ります。

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図1. 電磁ブレーキの構造
図1. 電磁ブレーキの構造
図2. ポルテスキャップのDC小型モータ
図2. ポルテスキャップのDC小型モータ