商用オフザシェルフモータで 航空宇宙・防衛機器の開発 時間を短縮

商用オフザシェルフモータで 航空宇宙・防衛機器の開発 時間を短縮

COTS (商用オフザシェルフ)とは一般に、既製品と して容易に入手できる標準的な民生品または工業 品のことです。航空宇宙・防衛(A&D)市場のほとん どのプロジェクトには厳しい仕様が求められます。 極端な環境で稼動できる頑丈で耐久性のある製 品を開発するためです。COTS製品は、しかるべき 材料または部品を用いて改良すれば、厳しい条件 が満たせるとともに製品の開発時間が大幅に減ら せます。

A&D分野にCOTSモータソリューションを用いるの は通常、概念実証を検証する手段として短時間で 初号試作品を作るための出発点に過ぎません。そ の後、モータとドライブの改良と、徹底した検証試 験とが何度か繰り返されます。MIL規格は、環境条 件に関して厖大な数の要件を記しているほか、製 造についてもISOや品質システムの必須事項に関連 して厳しい要求を課しています。こうした一般的な 課題はあるにせよ、それでも土台の設計としてCOTS モータを使えば、プロジェクトのサイクル時間は圧 縮できます。

COTS製品を使わずに一から設計する方法もありま す。すなわち防衛関連企業がモータメーカーと契 約して、目的の仕様を満たす製品を設計、開発して もらうという方法です。この方法は、COTSを利用し た場合に比べると、完成までに時間もコストも大 幅に上回るおそれがあります。また、必要なモータ の設計経験、A&D関連分野での経験を持つメーカ を見つけるのも場合によっては困難です。

一から設計する方法を採る場合は製造図面の作成 が必要です。また製造設備の準備も、製造工程に 関する文書の準備も必要です。COTSなら文書も製 造設備もすでに整っています。新規モータの設計 に伴う製造設備は、場合によっては完成までに1年 以上かかるかもしれません。しかしCOTS製品なら 製造設備はすでに整っています。COTSを利用すれ ば、その時間と費用は、目的の仕様を満たすのに 必要な改良作業に集中できます。ポルテスキャッ プのように経験豊富なメーカーと組めば、MIL規格 の適用を受けるときによくある困難を乗り切るた めのソリューションが最短の時間で見いだせます。 ポルテスキャップは品揃えがこの上なく豊富であ るため、COTSを利用したソリューションが簡単に効 率よくカスタマイズできるうえ、全体の開発時間も 縮まります。

仕様に関する課題: 航空宇宙&防衛分野の要件を 満たすために

COTSモータを使って設計する場合でも、普通はほ んの少し変更するだけで基本的なMIL規格の要件 は満たせます。しかし下に示したように、場合によっ ては別途検討の必要な一般的仕様があります。

衝撃と振動
広い温度範囲
気圧(真空)

衝撃と振動に対する要件は通常、モータにかかる 可能性のある力(軸方向力および半径方向力)が比 較的大きい場合に関係があります。これは、モー タが稼働していようとしていまいと関係がありませ ん。非稼働時にかかる力は、たとえば当の機械ま たは装置を保管施設から稼動現場へ輸送すると きに発生します。ミサイルのフィンアクチュエータ に生じるような大きな衝撃と振動力は発射中に作 用すると考えられます。ほとんどの場合、衝撃と振 動に対する仕様は、衝撃負荷に耐えられるもっと 丈夫なソリューションを用いて標準的ベアリングシ ステムをアップグレードすれば満たせます。フィー ドバック素子についても、エンコーダーのガラス ディスクをレゾルバーや磁気スケールのような壊 れにくいソリューションに交換して高耐久化を図ら なければなりません。

軍用装置はありとあらゆる苛酷な条件で稼動でき なければならないため、MIL規格は広い温度範囲 に適応していなければなりません。航空機の燃料 バルブアクチュエータは、離陸から高高度飛行へ と至るまでに極端な温度変化にさらされます。温 度変化率が問題になることもあります。モータには さまざまな材料が使われていて、温度変化率によって膨脹または収縮するおそれがあるからです。そうなるとモータが損傷しかねません。標準モータであっても、改良すればこうした変化に適応できます。たとえばベアリングの潤滑剤を調整して低温要件と高温要件とを満たしたり、巻線材料や絶縁材料を変更して極端な温度にも対処できるようにしたりするなどの方法があります。

真空状態で取り組むべき課題もさまざまあります。高高度航空機や宇宙船は超低気圧環境および真空環境にさらされます。こうした環境はモータの熱放散能力に影響します。人工衛星のソーラーパネルの姿勢を制御する超小型アクチュエータは、人工衛星が軌道高度に達したときに機能を果たすこと、信頼性を発揮することが求められます。DCブラシ付きモータに使われる標準的なブラシ材料は、高高度または真空中では働かなくなるおそれがあります。ベアリングの潤滑剤からガスが放出すれば、ベアリングの寿命に影響が及ぶばかりか、不要な粒子によって真空環境が汚染される原因にもなり得ます。こうした課題はどれも解決できます。方法としては、標準的なブラシ材料、整流子材料をやめて、真空要件に適した材料に置き換えること、モータを一体化するときに別の熱放散手段を採り入れること、ガス放出の問題を解消した材料、MIL規格に準拠した潤滑剤を選ぶことです。

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防衛関連企業は、既存の設計を利用してモータメーカーの実績を活用することにより、目的のソリューションがカスタマイズできます。これは既製品の一部だけを変更するという取り組みであり、以下の利点があります。

高い価格競争力

COTSモータは、市販されているため入手が容易であり、安価でリードタイムも短く、信頼できるメーカーから直接、あるいは販売代理店を通じて購入できます。

経験豊富なモータメーカーの中から選べる

厳しい工業環境に適した信頼できるモータソリューションを提供しているメーカーは多い。また、環境要件に合わせたカスタマイズのできるメーカーも多い。さらに、応用分野に特化した試験をサポートできるメーカーも多い(試験は、要件に応じて、モータメーカーの内部で、あるいは外部施設で実施)。

顧客のニーズを支える開発時間

顧客のニーズを支える開発時間 COTS製品を使って短時間で試作品を開発する方法を採れば、設計者は、厳しい仕様を満たすのに必要な個々の改良に集中して取り組めます。この方法なら、設計サイクル全体が圧縮でき、NREコストの削減にもつながります。

最新のテクノロジーと最適化された性能

メーカーは、最新のテクノロジーを基盤にして設計の改善と発展に努めます。そのため防衛関連企業は最先端の材料と製法が利用できます。ポルテスキャップはさまざまな経験を活かすことで、A&D分野に課せられる数多くの環境的課題を克服し、同時に、磁石技術の進歩を活用したモータの新たな潜在能力を引き出すととも、新たなモータ製造コンセプトを生み出します。広く使われている市販製品を用いるということは、一から設計する場合に比べて、信頼できる実際のデータが豊富に得られるということでもあります。

結論

COTSを利用してA&D分野向けのソリューションを開発するためには、個々の要件への対応に積極的に取り組んでくれるサプライヤーの協力が絶対に欠かせません。構想の初期段階から設計技術者とモータソリューションプロバイダーとが一緒に取り組んだとき、最善のソリューションが生まれます。COTSを利用するうえで特に大切なことは、試作品向けに少量ずつ標準製品をカスタマイズできる能力がそのメーカーにあるかどうかです。このプロセスは場合によっては、最終設計が固まるまでに段階を踏んで何度か繰り返されます。多くのA&D分野では、大きな利益が得られるまで長期にわたって製品を入手できることが強く求められます。初号試作品のためのカスタマイズに始まって、認定試験、そして最終製品の合格に至るまで長い時間がかかるからです。ポルテスキャップは、MIL規格を適用するうえで必要なことを理解しており、標準製品をカスタマイズして厳しい要件を満たしてきた確かな実績があります。

一言で言えば、商用オフザシェルフ(COTS)製品のカスタマイズは、A&D分野向けの時間節約ソリューションであり、最も重要な開発作業のスピードを速めてくれる存在です。イノベーションを損なうことなく、開発期間を長期化させることなく、極端な環境でも確実に作動するよう製品が改良ができます。

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図1 - 全体の開発時間
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図3
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